Shirane Sanzan Traverse – Part I: Into the Storm and Light
9月末。南アルプスでの登山第2弾として、その核心のひとつとされる白峰三山を縦走することにした。
雨と風の洗礼、急登や岩場、そして一瞬の晴れ間。
今回の旅は、日本アルプスの厳しさを改めて教えてくれるものだった。
北岳・間ノ岳・農鳥岳――この稜線で出会ったすべての瞬間を、ここに記す。

Prologue – Into the Ridge of Trials and Blessings
白峰三山縦走は、広河原から白根御池小屋、北岳山荘、農鳥小屋を経て奈良田へ抜ける有名なルートである。
当初は、朝早く広河原に入山できれば肩ノ小屋あたりまで行けると思っていたが、平日はバスの便が限られるため、無理をせず3泊4日とした。
結果的に日曜日出発となり、早朝バスが利用できたものの、足腰の調子が万全ではなかったため、当初の計画通り3泊とした。
9月28日に入山し、10月1日に下山する――ゆとりのある行程のはずだった。
甲府駅から登山バスに乗り、2時間ほどで広河原へ着いたが、乗客の7割ほどは外国人登山客だった。
日本第二の高峰・北岳の人気を実感する。
Day 1:静寂の森を抜けて(広河原 → 白根御池小屋)
Into the Quiet Forest: Hirogawara to Shirane-Oike Hut






野呂川の吊り橋を渡り、天気に恵まれた穏やかな出発だった。
白根御池小屋を目指し、深い樹林帯へと入っていったが、紅葉が少し始まりかけていた。
すれ違う登山者は少なく、若者や外国人の姿が目立った。
初日は食料をすべて背負っているため、やはり重いなと感じた。
とはいえ出発時点でのベースウエイトと食料を合わせて約13kg程度だった。
つくづく、昨今の登山用品類ギアの軽量化が進んだので軽くなったなと感謝するところがある。
誰もいない森の中にひとり立つ瞬間、細胞が癒されていくような感覚が、いつもある。
ジェームズ・レッドフィールドの『聖なる予言』に「古い原生林には、細胞レベルから人を癒す修復力がある」みたいなことが書かれていたのを思い出す。
太古の香りを感じながら歩く森は、まさにその“癒し”そのものだった。
予想通り3時間ほどで白根御池小屋に到着した。
テント場は空いており、予約済みだったため手続きもスムーズだった。
白根御池は小さく濁ってはいたが、背後の樹林が映える美しい風景だった。
午後から霧が立ちこめ、気温が下がったため、早めにテントに入り休んだ。



Day 2:風雨と光(白根御池小屋 → 北岳 → 北岳山荘)
Storm and Light: Climbing Toward Mt. Kitadake
午前4時半起床。外は雨で、天気予報どおりだった。

この日の行程は北岳山荘まで約5.4km。距離は短いが、急登が続いた。
6時出発。雨脚は次第に強まり、トレイルは小川のようになっていた。
アメリカでのバックパッキングで雨中行動は多少経験していたが、雨天時に急峻な登山道を大型ザックで登るのは初めてだなと気づいた。
今回の山行で、新調したパタゴニアのグラナイト・クレスト・ジャケットを初投入したが、ピットジッパー付きで透湿性が高く、快適だった。
「日本の山はやはり雨が多い」と改めて実感した。
樹林帯を抜けても雨は止まず、稜線に出るころには猛烈な風が吹き始めた。
吹き飛ばされそうなほどの強風――過去最強の体験だった。
「山を舐めてはいけない」と、身をもって教えられた。
肩ノ小屋の手前で雷鳥3羽と遭遇した。


北岳山荘を目指していた登山者の一部は、ここで強風を懸念して引き返していった。
自分は、午後には風が弱まると信じ、予定通り進むことにした。
北岳山頂に着く頃もまだ強風とガスに包まれていたが、20分ほどで急速に晴れた。
雲が割れ、光が差し込んだ瞬間――世界が金色に輝いた。
「登ってきて良かった」と心から思えた。




下り途中では富士山も姿を現し、天の褒美の如く景色が綺麗になった。






14時ごろ北岳山荘着。風は嘘のように止み、穏やかな稜線になっていた。
この日のテント場は私以外に1張のみで、また霧が出て来て、静寂に包まれていた。

夜、南アルプス市方面の街の灯りが遠くに見えた。
夜になると風がまた出て来た。
Durston X-Dome 1テントは、夜の風にも十分耐えてくれた。
次の日には、白峰三山の核心部・間ノ岳と農鳥岳を越える予定。
→ 白峰三山縦走記・後編:雲と雨の稜線へ(間ノ岳〜奈良田)はこちら >


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